なぜデフレではなく、インフレを目指そうとするのか

 

 

「政府は長く続くデフレ(デフレーション、以下「デフレ」)からの脱却、インフレ(インフレーション、以下「インフレ」)への転換を目指している。」

ニュースなどでよく聞く解説です。

日銀の黒田総裁が2013年の就任当初目標に掲げた「物価上昇率2%」、つまり積極的にインフレを目指す姿勢は印象的でした。

 

現状のデフレはよくないからインフレを目指そう、という考え方ですね。

もちろんここで言うインフレは「適度なインフレ」のことで、物価が3年で2倍以上になるようなハイパーインフレのことではありません。

世間一般的には「長期的にはデフレよりインフレの方が望ましい。」という考えが多数派です。

ただ、これが昔から疑問でした。

自分の感覚的には物価が安くなるデフレの方が生活は楽になるから、デフレの方がいいじゃん!って。

この後に解説する一般的な考え方を聞いても、理屈はわかるけど、なんかなぁ…と腑に落ちませんでした。

 

デフレとは・インフレとは

そもそもデフレとは・インフレとはなにか。

 

デフレとは、モノやサービスの値段がどんどん下がっていく状態。

同じモノが1年前より安く、そして1年後にはさらに安くなっていくであろう状態。

 

多少オーバーに考えればこんなイメージ。

同じモデルのクルマなのに、1年経過するごとに新車販売価格が20万円下がっていくような状況です。

インフレはデフレの逆。

同じモノが1年前より高く、そして1年後にはさらに高くなっていくであろう状態。

同じモデルのクルマなのに1年経過するごとに新車販売価格が20万円ずつ高くなっていく状況ですね。

 

一般的な考え方はいまいち腑に落ちなかった

デフレが続くと、物価が下がり、企業業績が悪化。

企業業績が悪化すれば、そこで働く従業員の給料も下がったり、解雇されたりして生活が苦しくなる。

生活が苦しくなることで買い控えがおき、企業はさらに物価を下げないとモノが売れなくなり業績がどんどん悪化、そして更に従業員の給料が減額…

デフレの状況ではこのような負のスパイラルをイメージします。

 

このイメージで、一応納得はできたのですがいまいち腑に落ちなかったのが正直なところでした。

腑に落ちないといっても理論的には納得できますし、感覚的なものではあるのですが。

 

腑に落ちた考え方

デフレよりインフレを目指すべき、という理屈がいまいち腑に落ちていなかった私ですが、最近知った考え方はとても腑に落ちるものでした。

 

デフレの状況下では時が経過するほど物価が安くなります。

先ほどの図では1年ごとに20万円下落してきましたが、もっと極端に考えてみましょう。

今200万円のクルマが、1年後といわず1ヶ月後に20万円値が下がって180万円になるような状況だとしたら(なかなか現実的にはありえないでしょうが。あくまで仮設です。)。

今そのクルマを購入するでしょうか。

私なら今は買わず、安くなる1ヶ月後、いやその先ももっと安くなることが予測されれば、できる限り買う時期を先送りします。

なぜなら、その方が同じクルマをより安く買えるから。

極めて自然で合理的な発想です。

そして多くの方が同じ行動をとると思います。

買うのを先送りすればするほどお得→なかなかお金を使おうとしなくなる→世の中にお金が回らなくなる→景気が悪化する

だからデフレはよくない、という結論になります。

 

そしてインフレ。

インフレの状況下では時が経過するほど物価が高くなります。

デフレの例と同様に

今200万円のクルマが、1ヶ月後には20万円値上がりして220万円になるような極端な状況だとしたら。

欲しい車種が決まっているのであれば

「1日でも早く契約させてくれ!」

と車屋さんにせっつきませんか?

今日200万円で購入できるクルマであっても明日200万円で買える保証はない、そして値上がりすることはあっても値下がりすることはない。

そんな状況下なら、1日でも早く買うのが合理的です。

今買うのが一番お得→どんどんお金を使おうとする→世の中にお金が回る→景気がよくなる

だからインフレの方がよい、という結論になります。

 

さいごに

今回紹介した考え方がなぜ腑に落ちたのか。

理由は「消費者の心理が反映されているから」だと思います。

 

一般的な説明では、「デフレでモノが売れなくなって、企業の業績が下がって、給与が下がって…」と、消費者の姿が見えません。

給与を受け取る立場の人間として消費者が描かれているのかもしれませんが、消費者がどう考え、どう行動するのかまで描かれていませんよね。

 

今回紹介した考え方では、消費者が常に合理的な行動をとろうとする心理を反映させています。

デフレでもインフレでも、消費者はなるべく損をせず得をするような、合理的な行動にでるはずです。

多くの人が自分ができる範囲内で合理的な行動をとろうとする結果、以下のようにデフレ→景気悪化、インフレ→景気回復とつながるわけです。

・デフレだと待てば待つほどモノを安く買えてお得だから、なかなかお金を使わなくなり、結果景気が悪くなる

・インフレだと今が最もモノを安く買えてお得だから、どんどんお金を使うようになり、結果景気がよくなる

 

一般的な考え方より、今回紹介した考えの方がとても腑に落ちたので今回の記事で紹介してみました。

「こんな考え方もあるんだ。」と参考になれば幸いです。