暦年贈与は令和4年度税制改正では廃止になる見込みなし!大げさな見出しや噂に惑わされてはいけない
2021年も半年を過ぎたころから、妙な噂を耳にするようになりました。
「贈与税が高くなるんだって…」
「暦年贈与の非課税枠、無くなるんでしょ?」
「生前贈与加算の期間が3年から10年とか15年に延びるんだって?」
最初聞いたときはびっくりしました。
「えっ、知らない!聞いたことないし!」
税理士が税に関わる情報を知らないというのはとてもまずい。
すぐに事務所に戻って調べてみました。
過激な見出しが誤解を与える
まず、2021年から暦年贈与の非課税限度額や生前贈与加算の制度が大きく変わったなんてことはありませんでした。
ほっとしました。
そりゃそうです、そんな大きな改正が行われていれば嫌でも税理士には情報がはいってきます。
では、なぜいろんな噂が広まっていったのか。
おそらく理由は週刊誌やネットニュースなどの過激な見出しです。
週刊誌を買う習慣はまったくありませんが、新聞には週刊誌の過激な見出しがどうしても目に入ります。
その見出しに、このような断定口調の情報が載っているんです。
下の画像はの新聞に載っていたある週刊誌の見出し広告ですが、断定口調ではっきり書いてあります。
「暦年贈与も教育資金の一括贈与も廃止!」と。
…ほんとに、いろいろ言いたいことはあるんですが。
これだけは言いたい。
「断定すんなよ!!」
と。
出版社サイドでは派手な見出しで広告を打って、週刊誌の販売数を上げなきゃ商売にいけないことはわかっているつもりです。
それでも、なんら決まっていないことを断定口調で見出しにするって問題ないんでしょうか?
百歩譲っても
「暦年贈与も教育資金の一括贈与も廃止か!?」
許されるのは「~か!?」という表現までではないでしょうか。
もちろん週刊誌を買って本文を読めば、まだ決定事項ではないことがきちんと書かれているんでしょうが、見出しを見た人全員が購入するわけではありません。
誤解を与えかねない表現の見出しを広告などに載せるのはどうなんでしょうか。
発端は令和3年度税制改正大綱内の文章
火のない所に煙は立ちません。
今回の噂はどこが火元だったのか。
その答えは「令和3年度税制改正大綱」の中にありました。
確かに「暦年課税制度のあり方を見直すなど、(中略)、本格的な検討を進める。」
と書いてあります。
これを見る限り、国は暦年課税制度を現状のままでよいとは思っていないことが伝わってきます。
次の年度、つまり令和4年度の税制改正大綱の中でもっと踏み込んだ議論が行われ、改正されるかもしれない。
その可能性は十分伝わる文章です。
ただ、ここからなぜ「暦年課税制度は廃止!」という極端な意見にまで飛躍させられるのか。
ちょっと私には理解できませんでした。
令和4年度は改正の見込みなし
2021年12月27日時点で、令和4年度の税制改正では暦年課税制度を含め、相続税・贈与税で大きな改正が行われる見込みはなくなりました。
先日発表された令和4年度税制改正大綱の中に、そのような大きな改正が行われるという記載はまったくなかったからです。
そもそも、一年前の大綱に記載されていたように、相続税・贈与税の「あり方について本格的な検討を進める」ことができたのか。
おそらく、ほとんど検討すらされなかったんじゃないかと思われます。
なぜなら令和4年度税制改正大綱の該当部分が、ほとんどコピペに近い文章だったからです。
<令和4年度税制改正大綱>
<令和3年度税制改正大綱>
間違い探しか!ってくらいほぼ同じ文章です。
何も検討できなかったからこそ、文章もほとんど変えられなかったんじゃないかと推測します。
かんたんに手に入る情報からは距離を置く・時間を空ける
相続に関心のある方は、その友人・知人にも相続に関心がある方が多いように思います。
その友人から
「贈与税の非課税制度がなくなるらしいよ?」
なんて言われたら焦ってしまいますよね。
新聞に載っている週刊誌の見出しにも同じようなことが書かれてる!
ネットニュースの見出しにも!
なんてことになれば、なおさら。
ただ、そういったかんたんに手に入る情報からは距離を置き、そして時間を空けてすぐに極端な行動をとらないことをオススメします。
下手に動いた結果、余計な税金を負担する可能性だってありえます。
焦ってよいことは何もありません。
まず、友人・知人からの情報。
悪意をもって変な情報をもってくる方はそうそういないと思いますが、人からのまた聞きや風の噂などは大抵尾ひれがついているものです。
また、今回紹介したように大元の情報源が決まっていないことを、さも決まったかのように書いている可能性もあります。
決して周りの方の話を信用するな、と言いたいわけではありません。
そういった話はあくまで参考までに留めておいて、情報の真偽は必ず自分で確認しましょう!と言いたいんです。
それこそ、調べようと思えばインターネットでいくらでも調べることはできるんですから。
ただ、このときも情報の出処には気をつけましょう。
まず調べるなら官公庁のサイトで公表されている情報から。
官公庁のサイトで公表されている情報がわかりにくければ、それらの情報を説明している専門家のサイトを活用しましょう。
一般の方がホームページやSNSで発信している情報の精度は玉石混交ですから、あまり鵜呑みにしないことをオススメします。
それでも情報の真偽が判断つかなければ、専門家に直接相談してみてはどうでしょうか。
今回のような税に関わるケースであれば、税理士ですね。
多少相談料が発生しても、偽の情報に踊らされて余計な税負担が発生したりするよりは、はるかにいいと思います。