税理士試験の5科目合格ルートと大学院免除ルート 税理士登録後で2つのルートに違いはあるのか

税理士試験結果通知書の束

※税理士試験結果通知書(不合格のとき届くやつ)4年分。簿記論が全試験科目の中で一番免除を受けたかった…

 

先週の2021年12月17日(金)は第71回税理士試験の合格発表日でした。

5科目合格して官報に名前が載った方、科目合格された方、おめでとうございます!

 

一方で、1年間一生懸命つらい試験勉強に取り組んできたのに結果がついてこなかった方もたくさんいます。

私も税理士試験はトータルで8回不合格。

簿記論にいたっては初回から4回目まで連続不合格(試験結果A→B→A→A、今はアルファベットじゃなく点数が表示されるんですね)。

不合格だったときの辛さは、よくわかっているつもりです。

理想はすぐに気持ちを切り替えて次回の税理士試験に向けて勉強を始めることですが、12月いっぱい位は今後進む道をどうするか(受験科目をどうするか、そもそも税理士試験の受験を続けるのか、それとも大学院へ進学して2科目免除を狙うのか、などなど)じっくり考えてもいいと思います。

 

大学院を卒業して税法2科目免除を受ける道

税理士試験は11科目ある試験科目のうち、必修科目・選択科目の違いはあれどその中から5科目合格して初めて「合格」となります(税理士登録する権利を持つという意味で)。

税理士登録するためには、他に2年間の実務経験が必要ですが。

 

5科目合格以外の有名な税理士登録ルートとして大学院卒業による科目免除があります。

2年かけて大学院で修士学位を取得することができれば国税庁に科目免除を申請することができ、免除決定が認められれば税法なら2科目、会計科目なら1科目(進学する大学院で学ぶ内容により、税法が免除されるのか、会計科目が免除されるのかは異なります)が免除されます。

一般的な大学院で1年あたりの学費が100万円くらいかかるので、2年間で200万円。

大学院に入学するためには、入学試験に合格する必要もあります。

修士論文を完成させるのも昔の受験生仲間から聞く限り、相当大変らしいです。

税理士試験で2科目合格するより、大学院卒業で2科目免除を受ける方が確実性は高そうですが、コストは相当かかりますし、大学院に通って勉強する時間もかかるし、免除決定までのルートも決してラクではないようです。

 

以前は5科目合格こそが正規のルートで、大学院卒業による免除を受けての登録は裏道・抜け道的ルートのような印象がありました。

しかし、最近では3科目合格+税法免除2科目の方がスタンダードになってきたのでは?と思うくらい免除申請して税理士登録した方の話を聞くようになりました。

「3科目まで合格したら、頑張っても受かる保証がない残り2科目の受験を何年も続けるより、2年間頑張ればほぼ確実に免除をとれる大学院進学の方が合理的じゃない?」

って考える方が増えたんでしょうね。

税理士会の調査結果では、まだ5科目合格者の方が免除を受けた方より割合的に多いようですが、以前より免除者の割合が増えている、という記事を以前見た記憶があります。

 

自分の受験生時代は、先に書いたように目指すべきは王道の5科目合格!というイメージが強かったです。

同時に、大学院進学はどうしても受からないときの最後の手段、というイメージをもっていました。

実際は3科目合格後、4科目目と5科目目を2年間で合格できたので大学院進学を真剣に検討することはありませんでした。

どちらかといえば、4年連続で簿記論に不合格だったときの方が「こんなに苦しい簿記論をスルーできるなら大学院もありか…?」と検討していたかもしれません。

そのときはまだ1科目しか合格していなかったので、とても大学院に進学するという決断はできませんでしたが。

自分がいる長野県では身近に大学院がなく、仕事をしながらだと通信制の大学院(おそらく税理士試験の税法免除が受けられるのは、山口県にある東亜大学院しかないはず)しか選択肢がないので余計大学院進学は現実味がありませんでした。

 

5科目合格と免除合格、税理士としての実務で違いはあるか

では5科目合格と免除合格で、実務上何か違いはあるのか。影響はあるのか。

…まったくありませんね。まったく。

 

まず、お客さんは税理士合格へのルートがそんないくつもあることを知りません。

一般の方がそんなに税理士試験に興味をもつわけないですもんね。

税理士会でも、「どうやって合格したか」はあまり話題になりません。

税理士になってしまったら、もう試験のことはあまり関心毎にならないって感じなんでしょう。

たまに同じ科目で何年も受からなかったって方に会うと「その辛さ、わかります!!」ってテンションあがりますけど。

 

試験合格した科目については、いやというほど勉強してきているので、それが自信となり、実務年数が少ないときでも実務をこなせるようになることはメリットだと思います。

ただ、試験勉強はどうしても短期間で試験に受かるという目的に特化した勉強内容になるため、じっくり学んでいる時間がありません。

通ったことがないので想像になってしまいますが、大学院ではじっくりと腰を据えて税法などの法律を学べると思うんです。

なので、いわゆるリーガルマインドを身につけられるんじゃないかと。

そこが、5科目合格の税理士にはない大学院を卒業された税理士強みなんじゃないかな、と思っています。

あ、5科目合格の税理士の方でもちろんしっかりリーガルマインドを身につけている方も大勢いらっしゃると思いますが。

私のように、大学でほとんど法律を勉強したことがなかった場合、リーガルマインドに自信がない方は少なくないんじゃないかなー、と。

 

3科目合格後は大学院進学を視野に入れるべき

私がもし、3科目合格した状態に戻ったとしたら、大学院進学を視野に入れます。

なかなか本試験に受からずそれぞれの科目合格に何年も費やしていたら、試験勉強で身につく知識以上に早く税理士登録できていればえられたはずの機会損失がでかすぎるからです。

4科目目、5科目目の税法の試験勉強自体は有益なので、それぞれに1年間は費やしてもいいと思うのですが。

もちろん、3科目合格までに大学院に2年間通えるだけの学費を用意してある前提です。

 

合格科目が3科目だった頃は、5科目合格までたどり着ければ、何かすごい知識が身についていそう…という妙な妄想がありましたが、実際そこまでのものはありませんでした。

試験勉強を通じて身につけた知識や、きつい勉強・試験に耐え抜いたことで増した忍耐力はそれなりに価値のあるものだったとは思いますが。

4~5科目合格までの期間が2年で済んだので機会損失は少なかったと思えますが、もし3年・4年と多くの年数をかけていたらきっと後悔していたと思います。

「確実性を重視して大学院に進学していればよかった…」

と。

 

5科目合格を目指す勉強の過程で身につける各税法の知識は決してムダにはなりません。

けれど、もし4科目目や5科目目で何年も足踏みをしている場合。

人生の貴重な時間をあと何年税理士試験に捧げるのか。

たとえ、大学院の学費に200万円以上かかったとしても、税理士試験受験継続により費やす時間の方が損失としてははるかにでかいという考え方もあるはず。

今回税理士試験で惜しくも不合格だったすでに3科目は合格しているという方、一度大学院進学という選択肢を真剣に検討してみてはいかがでしょうか。