背水の陣を敷けば、税理士試験で実力以上の力をだすことはできるのか
背水の陣。
失敗したら再起不能という一歩も後にひけない状態に身を置いて、決死の覚悟で事に当たること。
「背水の陣を敷く」と聞けば、決死の覚悟で事に当たり、普段の実力以上の力を発揮する。
そんなイメージがあります。
資格試験でいえば、あえて自分を不利な状況に追い込んで退路を断つことで、実力以上の力を本番で発揮し合格をつかみ取る、といったイメージでしょう。
しかし、実際に自分を不利な状況に追い込むことで、実力以上の力を発揮することはできるのでしょうか。
窮地で立ちすくむタイプは背水の陣で実力をだせない
私は不利な状況に追い込まれてしまうと、力を発揮できないタイプの人間です。
これまでの税理士試験でイヤというほど実感してきました。
自分が不利な状況で力を発揮できないタイプの人間だと特に実感したのは、2009年の税理士試験受験時。
当時、簿記論挑戦4回目。
この年、受験科目をはじめて1科目に絞りました。
2年目の法人税法の受験を断念し、とにかく結果を残すことを優先しての簿記論1科目受験。
当時29歳。
これで簿記論に受からなければ、20代後半の仕事以外の時間のほぼすべてを税理士試験に捧げたのに合格科目は1科目だけという自分としてはかなり追い込まれた状況でした。
その結果「絶対に受からなければ!!」と気負いすぎてしまい、試験の出来はかなり悲惨な状況に。
受験から4ヶ月後、あえなく不合格通知を受け取るはめになってしまいました…
とんでもない難問・奇問が出題された年だったので合格ラインとなる点数もかなり低く、本番で冷静にうまく立ち回ることができていれば合格できていてもおかしくなかったはず。
なのに、難問・奇問にぶち当たった時点で思いっきりテンパってしまいました。
あまりのテンパり具合で本試験中に吐きそうになったくらいです。
当時はもうテンパった時点で試合終了でした。
平常心をキープできなかった要因として、「何がなんでも今回だけは受からねば!」と自分を精神的に窮地へ追い込んだのが大きかったです。
窮地へ追い込まれたときに「なにくそ!」と奮い立てるのか、「あわわ…」と立ちすくんでしまうのか。
自分はしょせん後者なんだな~と情けない思いをした年でした。
退路を残したおかげで、気負わずに受験できた
4回目の簿記論受験に失敗した次の年は2科目受験しました。
科目は簿記論と消費税法。
この年は初めて専門学校で消費税法の講義を受講。
1年間の大半を消費税法の勉強に充てており、簿記論は過去5年間の中で最も勉強しない年でした。
当時の心境は
「もー、簿記論どんだけやっても受からんし。何やったら受かるかわからんし。直前の模試や直前期の講義だけやっとけばいいや。」
「税法とセットで受験し続けてれば、そのうち受かるやろ。」
という、半ばやけっぱちのような感じ^^
そしたら、こんないい加減な気持ちで受験した簿記論にこの年受かってしまいます。
消費税法は落ちましたが。
簿記論に関しては半ばあきらめの境地に達したことで、気負わずに普段通りの実力がだせるようになった結果受かったのかな、と。
あとは、初めて消費税法を1年間勉強した年だったので、「もし2科目とも不合格でも、消費税法のことを深く勉強できた年だったからムダにはならない!」と思え、気負わずに受験できたのもよかったのかな。
いかに気負わずに平常心をキープできるかが、合格のカギになると実感できた年でした。
「火事場の馬鹿力」は期待するな
簿記論合格後は1年に1科目ずつ順調に合格を積み重ねて、受験生活を終えることができました。
4科目目の相続税法と、5科目目の法人税法は複数科目受験ではなく1科目受験でしたが、受験時の心境は簿記論に受かった年と同じような感じでした。
「今回不合格でも、今年1年みっちり相続税法(法人税法)を勉強できたからムダにはならないし」
「働きながらの受験だから、失敗してもすぐに職にあぶれるわけじゃないし」
「勉強さえしっかり継続していれば、今回ダメでもそのうち受かるやろ」
と、何年もの受験生活を経て平常心をキープできる心境へたどり着けたことで、その後の連続合格につなげられたんじゃないかと思っています。
その人の性格によるかもしれませんが、「背水の陣」を敷いて「火事場の馬鹿力」がでることを期待するのはやめた方がいいでしょう。
・試験直前で退職
・試験直前で受験科目を絞る
・貯金がなくなる寸前まで受験専念を続ける
今後の人生に影響がでるような行動にでて背水の陣を敷いた結果、いわゆる「火事場の馬鹿力」がでて想定通りに合格できればかっこいいのですが。
割合的には、私の過去の受験のように気負いすぎて普段の力がだせず惨敗…となる人の方が多いんじゃないかと。
税理士試験では、気負いすぎて普段の実力がだせなくなった受験生から勝手に脱落していきます。
自分が平常心をキープできればそれだけで、合格ラインに残れる可能性を高められます。
背水の陣を敷いたりせず、平常心をキープして本試験を乘りきることができれば、1年間やるべきことをやってきた方なら、きっと成果がでるはずです。