集計には電卓をなるべく使わない Excelを、データを活用しよう 

電卓といえば税理士や経理担当者とは切っても切り離せない商売道具、

と思われがちですが。

まったく使わない、とまではいかなくても10秒以上電卓を叩いていたら

「その集計作業は非効率では?」

と疑うべきです。

Excelという集計作業においてはとうていかなわない、優秀なパートナーがいるんですから。

 

電卓を早く叩けることに意味はない 仕事が早いことに意味がある

簿記、税理士試験の勉強を始めると電卓を叩くスピードはどんどん上がっていきます。

特に税理士試験の簿記論はスピード命なのでめちゃくちゃ鍛えられます。

試験時間内では到底終わらないあの問題量。

そんな中では電卓を叩く時間を早めることが1問でも多くの問題を回答できることにつながり、有利になるので。

簿記論に受かるころには、一般の方からは一目置かれるほどのスピードになっているのは間違いないでしょう。

 

一方、会計事務所でお客さんから預かった資料の集計をする場合は電卓を早く叩けると有利なのか。

PCがなかった時代は断然早い方が有利だったでしょう。

集計するにあたり電卓操作は欠かせないものでしたから(そろばんの方が早い方もいるかもしれませんが)。

しかし、一人に一台PCが支給されるのが当たり前になった現代ではどうか。

ずーっと電卓を叩いている人がいたら、上司からはこう思われてしまうでしょう。

「Excelで集計した方が早くて、正確なんじゃないの…?」

 

紙資料の集計では電卓に頼るしかない

ただExcelを使うといっても、紙の資料に書かれた数値をExcelにひたすら入力していくのは微妙です。

入力した数値がすべて表示されるので、電卓より検算はしやすいかもしれませんが。

1ヶ所入力ミスがあれば、合計値もまったく違ってしまうのはExcelでも電卓でも同じですし。

紙の資料をPDFにして、そのPDFをExcelに読みこんで…という方法もなくはないのですが、数値が手書きであればその手書きの数値をExcelに読みこませるのはかなり難易度が高いでしょう。

 

資料を「データで」お願いしよう

結論、集計用の資料としてはデータがベストです。

インターネットがこれだけ普及した現在、お客さんも仕事を進める上で何かしらソフトやアプリを使用していることが多々あります。

ただ、これまでずっと資料は紙に印刷して渡したり、PDFにして渡していれば「データで渡す」という発想がでないのは当然です。

最初は違和感をもたれるかもしれませんが、「データで資料がほしい」旨を伝えてみましょう。

やり方がわからないことも多々あるので、その場合は実際にお客さんのPCを触らせてもらって、やり方を一緒に見つけましょう。

ソフトやアプリから出力できるデータ形式はCSVが一番多いはず。

CSVファイルはExcelがPCに入っていればExcelで開こうとするはずなので、「Excelファイルでほしい」と伝えた方がわかりやすいというケースもあるかもしれません。

 

例.クレジットカードの取引明細をデータから集計しよう

クレジットカードはカードによって集計期間がバラバラです。

集計期間の末日は月末でない場合が多い印象があります。

例えば12月31日が決算の場合、締日が15日のカードだと

集計期間:12月16日~1月15日のうち、12月16日~12月31日までに利用した分を当期の経費として計上します。

決算書の貸借対照表には12月31日時点で引き落とされていないクレジットカード利用残高を「未払金」などの科目で計上する必要があり、12月16日~12月31日までの取引を会計ソフトに入力するのと同時に、未払金として計上すべき正しい金額を把握するために利用した金額がいくらだったかを把握する必要があります。

このとき、このような紙の資料だと電卓で集計せざるをえません。

 

12月16日~1月15日の取引から12月16日~12月31日の取引だけ抜き出して集計。

この明細はたいした数ではありませんが、赤く囲んだ数値部分を電卓で集計しないと合計額がだせません。

 

これを紙ではなくCSV形式のデータでもらえればExcelで開けます。

 

この明細はきれいに日付順に並んでいるので、集計したいセル範囲をドラッグするだけで合計値は下に表示されます。

合計額は73,871円。一瞬です。

 

取引数はたった24個なので、この程度なら電卓で集計しても正直たいして時間は変わりないと思います。

でも仮に取引数が2,000個あったら。

データなら合計値を求めるのに必要な時間はほとんど変わらないでしょう。

検索機能を使って12月31日の取引が入ったセルまでジャンプして、金額が入ったセルに移動。

そこから

Ctrl+Shift+↑

を押すだけ。

これで一瞬で最上部まで選択でき、合計値を表示できます。

電卓で2,000個の数値を叩いても集計自体はできますが、結構な時間がかかりますし、2,000個の入力をミスなく行うのはかなり困難です。

検算も欠かせないでしょう。

そして、めちゃくちゃ疲れます。

自分なら絶対やりたくありません…

どちらが効率よく、正確に集計できるかは言うまでもないでしょう。

 

カードが複数枚ある場合は日付が必ずしも昇順(日付の小さい順)に並ぶわけではありませんが、これもExcelのフィルター機能を使えば問題なく昇順に並び替えられます。

カード会社によっていろんな明細書の形式があるので一筋縄ではいかないこともありますが、ネットを駆使して調べればなんとかなります。

もちろん調べて解決策が見つかるまで時間がかかることはありますが、電卓を叩く時間に比べれば有意義な時間の利用方法ではないでしょうか。

 

さいごに

電卓をたくさん叩いていると、なんか仕事をやった感が生まれます。

けど、それはあくまでやった「感」です。

集計においてExcelに勝るものはありません。

であれば、集計が必要な資料は紙ではなく、なんとかしてExcelで開けるデータをお客さんから預かりたいものです。

 

会計事務所で仕事ができる人ほど、電卓の叩くスピードは遅い。

そんな時代がくるのはそれほど先ではないような気がします。