「税金はいくら稼ぐとかかってくるんですか?」 このシンプルな質問に答えるのが税理士でも難しい理由

年末調整テキストの画面

※国税庁のホームページに既にアップされている最新版の年末調整のパンフレット

 

10月になり今年も残すところ3ヶ月をきりました。

年末が近づいてくると、この質問が増えます。

 

「税金はいくら稼ぐとかかってくるんですか?」

 

質問されるのはパート勤めで毎年扶養の範囲内で働いている方。

年末までの期間で後どの位働くかを決めようとされているのでしょう。

 

「税の専門家である税理士ならこの程度の質問はサクッと答えてくれるだろう」と思われるかもしれませんが。

実はこの質問、正確に答えるのはかなり難しかったりします。

 

住んでいる市町村によって課税ラインが異なる!

答えるのが難しい理由は

「その人の家族状況や生活環境によって課税ラインが異なるから。」

例えば障害がある方とか、シングルマザーの方だと税金がかかりづらかったりします。

収入が給料のみなのか、年金もあるのか、副業があったり、不動産収入があったり、株取引をしているかでも答えは変わってきます。

なので質問された方のプライバシーに関わるところまで把握できていないと正確な回答はできないんです…

 

もう一つ簡単には答えられない理由。

それは住民税の課税ラインが住んでいる市町村によって異なるため。

 

住民税には「均等割」と「所得割」という2種類があります。

今回は「所得割」よりも先に課税されやすい「均等割」に限って説明したいと思います。

「均等割」は年収の大小に関わらず一定額を負担する部分です。

長野県の場合は年間で5,500円。

これは長野県内どの市町村に住んでいても同じです。

 

この均等割は市町村によって課税ラインが異なります。

前提として収入は給料のみで扶養する親族なし(子をすべて配偶者の扶養にしている場合を含みます)、未成年ではなく、シングルマザー・シングルファザーでもないものとします。

この場合課税ラインは年収100万円、96.5万円、93万円の3種類。

私の事務所付近の市町村でみるとこんな感じでした。

96.5万円・・・長野市、上田市

93万円・・・千曲市、坂城町

例えば年収が95万円の方なら

長野市に住んでいれば96.5万円以下なので均等割は課税されません。

千曲市に住んでいれば93万円超なので均等割が課税5,500円課税される。

ということになります。

 

「同じ収入なのに住んでいる地域が違うだけで税金が違うなんて不公平だ!」

という声が聞こえてきそうですが…

財政状況などによって決められているのか、その経緯は私にもわかりません汗

 

このような仕組みがあるので、冒頭の質問に対する一番シンプルな回答は

「年収が給料のみの場合は93万円以下なら税金は0円です。

それ以上だとお住まいの地域や家族状況などによって変わってきます。」

といった感じになります。

…あまりシンプルとは言えないかもですが…勘弁してください(^^;)

 

「103万円の壁」という言葉が広まったことによる誤解

質問される方の中にはこうおっしゃる方もいます。

 

「年収103万円までなら税金はかからないんですよね?」

 

…これは半分正解で、半分間違いです。

収入が給与のみの方は年収103万だと所得税はかからないので、この部分では正解。

しかし住民税はかかる可能性があるのでその部分では間違いです。

配偶者の扶養に入るため(配偶者控除の適用を受けるため)の収入の基準が去年まで「103万円」だったので、「扶養に入るための収入」と「税金が0円ですむ収入」がごっちゃになってしまっているのだと思います。

市町村のホームページを見ると「よくある質問コーナー」に

「収入を103万円以下におさえたのに住民税の通知が届いたのはなぜ?」

といった内容が結構あったので、実際市町村に質問がいくケースも結構あるのでしょう。

 

正しい情報かどうかはじっくり調べたり相談したうえで判断しよう

税金の仕組みは学校で習うことがなく、社会にでてからも自分から学ぼうとしない限りなかなか覚える機会はありません。

ネットを使えば手軽に調べることができますが検索結果には「正解」に混ざって「正解っぽいけどそうじゃないもの」、「間違っているもの」も混ざっています。

こと「税金」に関して言えば、同じような質問でも前提条件がひとつ違うだけで全然違う結論になったりします。

情報収集するときはつい自分にとって都合の良い情報に目が行きがちなので、じっくり調べて正しい情報にたどりつきたいですね。

もちろん税理士に相談いただければ前提条件をしっかり確認したうえで回答しますよ!

 

…くれぐれも「○○○〇〇!知恵袋」などのQ&Aサイトに載っている情報をそのまま鵜呑みにするようなことはしないでくださいね(笑)

 

 

[今週の雑談]

今日の新聞を見たら広告欄に

「~を応援させていただいております。」

という見出しが掲載されていました。

自分のブログではなるべく簡潔な言い回しをするように心掛けているので(実際にできているかどうかは別にして…)、この見出しにはかなり違和感が。

「~を応援しています。」

で十分ではないでしょうか?