10年程前に会計事務所に転職してから多くの方に質問されたこと、それは
「なぜ、税理士を目指したんですか?」 です。
その辺りのことを前職のことも交えながら書いてみたいと思います。

就職先はブラック企業!?

私は平成15年に大学を卒業後、小売業(某ホームセンター)に就職しました。当時は就職氷河期の真っただ中でした。
けれど小売業はあまり学生の就職先としては人気がなかったためか、サクっと第一希望の会社に受かることができました。私の就職活動はたいした苦労をすることもなく終了しました。
しかしそのツケは入社後に払うことになりました…

入社して一番ショックだったこと、それは…

・労働時間が半端なく長い!!
会社ではアパートを借り上げており、正社員は二人一組で2DKのアパートに住む決まりとなっていました。
入社後3ヶ月間は試用期間のため定時であがれたのですが、同室の先輩の帰宅がいつも23時、へたすれば24時をまわったり…
社員の始業時間は9時50分、それなのに店の開店時間は9時ジャスト!遅くても8時30分には働き始めているのに帰宅時間が毎日日付が変わるころ、というのは当時は衝撃でした。

その他にもキツかったことがありました。

・月9日休みがあっても半分位は出勤しないと仕事が終わらない
当時よく「小売業の仕事って商品を発注して店に並べてレジ打ちする位でしょ、何がそんなに忙しいの?」って聞かれました。
営業時間中はとにかく問い合わせに対応するのに時間がかかりました。
小売業は店の規模にもよりますが正社員数名とパート・アルバイトさんで店をまわす、というのが普通です。
各売場の発注、在庫管理等はパートさんが行うのですが、パートさんは午前か午後かどちらか出勤という方が多いです。
担当のパートさんがいない、となると在庫確認や商品についての質問などはすべて社員にまわってきます。
私のいた頃は店内取り扱い商品の内3分の1位が自分の担当でした。
本来は営業時間内に売場づくりを完成させないといけないのですが、実際は営業時間中にはほとんど進まず、閉店時間になってからやっと手をつけられることが多かったです。
昼休みも1時間設定はされているのですが、自分以外の担当者いないと容赦なく呼びつけられますし、本当に落ち着く暇がなかったです。
こんな状況なので夜中までかかっても作業が終わらず、やむなく休みの日に私服で店に行って作業の続きをしていました(泣)
休日出勤手当…もちろんでませんでした。
残業代…ほとんどでませんでした。
閉店後30分位たったらいったんタイムカードを打刻しにいくという文化ができあがっていました。
残業代が多いと店長が本部から注意を受けていたようですね。

・半年に一度の棚卸作業がすごくキツイ!
会社は決算を組むときにどれだけ在庫があるか把握する必要があります。
在庫数が分からないと在庫金額が確定できず、結果として利益が確定できません。
この在庫数を把握するために必要なのが棚卸作業で、それなりの規模の店は恐らく半年に一度やるのではないかと思います。
今では棚卸代行業者がやってくれる店も多いと聞いたことがありますが、私が勤めていたころはすべて自分達でやっていました。
この棚卸作業、何をやるかと聞かれれば「在庫の数を数えるだけ」、というとてもシンプルな作業です。
しかし店にある数万、数十万点という在庫を1~2日ですべて数えるという作業はいくら臨時アルバイトを雇うとはいえ結構キツイものでした。
そして正社員にとって一番しんどいのが、棚卸作業の後の「間違い探し」。
店ではすべての商品にバーコードをつけて在庫管理をしているので、発注した数も売れた数も全部把握しています。
そのため、理論的には発注した数から売れた数を引いた数字が在庫数となり、これが実際に数えた在庫数と一致するはずなのですが、これが一致しないことがかなりあるんです。
原因は万引きだったり、店舗間の商品移動を伝票処理してなかったりといろいろあるんですが… 数十万円、数百万円といった金額的にありえないズレがでていた場合、過去の伝票処理にミスがあったのではないか、ということで棚卸後1週間位、閉店後24時位までひたすら半年分の伝票とにらめっこしてミスがなかったか探し続けます。
これを出勤日に行うというのならまだ分かるのですが、休日であってもこの「間違い探し」には参加しなければならず、相当やるせなかったです。
休日出勤手当…もちろんでませんでした(泣)

・土日祝、GW、お盆、年末年始に休めない、連休がとりづらい
これは小売業なら当たり前だろ!って言われそうですが…
入社前は別に休日数は他の会社とそれほど変わらないし、平日休みならどこへ行くにもすいてるし、と平日しか休みがとれないことをあまりデメリットとは思っていませんでした。
けれど世間の皆様がお休みモードとなっているときに仕事に行く、ということは思っていた以上にこたえました。
特に大晦日の日の夜、除夜の鐘を聞きながら初売りの準備に追われ店内で新年を迎えたときは「あぁ、俺なにやってんだろ…」とすごく切ない気持ちになったのを今でもはっきり思い出せます。
こういう状況に身をおいていたので小売業界が学生から人気がない、というのも今ではよく分かります。
離職率も決して低くなかったと思います。十分ブラック企業に認定されうるレベルだったのではないでしょうか。
初めての就職先のマイナス面ばかり書いてしまいましたが、プラス面としては人間関係は良好だった、ということが挙げられます。
上に書いたような労働環境でも長く働き続けられている方は店長やバイヤーになってやる!という強い志をもった方々で、尊敬できる方が多かったです。
同期や先輩は年の近い人が多く、仕事終わりの真夜中でも焼肉を皆で食べにいったり、和気あいあいとしていましたね。
パートさんやアルバイトさん達もいい人ばかりでしたし、人間関係が原因で退職したという話を聞くことが多い現代で人間関係に悩むことがなかったのはラッキーだったなぁと思います。

この先どうしよう・・・

就職して2年程経過し、ある程度仕事にも慣れたころ、転職を意識するようになりました。
店長やバイヤーを目指す程の向上心は湧いてこない、ダラダラ仕事を続けても専門的な知識・経験が身につくわけでもない、この長時間労働を年をとっても続けられるだろうか、と将来に対する不安は大きくなるばかりでした。
悩んだ末、「まずは知識を身に着ける期間を作ろう、転職活動はそれからだ!」という結論に至りました。
ホントは在職中の休日に勉強をすればよかったのですが当時の自分にはそれをこなす気力も体力もありませんでした…
退職するときでも「まずは簿記の勉強を始めよう、簿記の試験を受けるとこまで専念してそこから先はそのとき考えればいいや。」位しか考えておらず、今振り返ると結構無鉄砲だったかなーと思います。

簿記検定から税理士試験へ

有休消化期間に入ってすぐ簿記の勉強を始め、2ヶ月程で日商簿記検定2級までの学習が完了しました。
その時点で平成17年の年末。年明けの2月に検定試験を受けてそこから経理職につけるよう転職活動するかー、と思っていたころ、ある日税理士受験用のカリキュラムがある専門学校のパンフレットが目に留まりました。
そこには税理士という資格についてのメリットがたくさん記載されていました(今見るといろいろ首を傾げたくなるところもありますが)。

  • 働きながらでも1年に1科目合格していけば5年で税理士になれる
  • 合格のための勉強がそのまま税務会計の知識習得につながる
  • 科目合格でも転職の際評価してもらえる
  • 会計事務所に転職すれば税理士補助者として税務会計の実務経験を積むことができる
  • 会計事務所は基本土日祝休みのところが多い

「専門的な知識を使った仕事がしたい」、「土日祝休みのところに転職したい」と考えていた自分には税理士や会計事務所職員という職業がとても魅力的に映りました。
専門学校の担当者の「受験に専念すれば、今からでも8月にある税理士試験にチャレンジして2科目合格を目指せますよ!!」というセールストークにも魅せられました。
年明けすぐに受講料を払込み、簿記論、財務諸表論という2科目の勉強を開始しました
こうして私は長い長い税理士受験生としての生活をスタートさせました。

このときは「頑張って勉強して5年後の30歳には税理士になる!!」という目標を掲げていました。
税理士試験の恐ろしさをまったく分かっていなかったから当時はこんなことが言えたんですね…
その後の受験生時代のこともまた別記事にしたいと思います。