「出版サービス」の謎 原稿不要の手間いらずで自分名義の書籍を出版できる…?

税理士などの士業をターゲットにした商売の中で、腑に落ちないサービスがあります。

その名も「出版サービス」。

 

“先生の作業は「プロフィール原稿とお写真のご提供」「デザインのご確認」だけ”!?

書籍を出版する過程が大変であろうことは、出版のことがまったくわからない私のような素人にも想像がつきます。

その大変な出版過程をプロである出版会社に任せることは、ごくごく自然でしょう。

普通は「出版サービス」と聞けば原稿は自分で書いて、それ以外の部分を出版会社に任せることをイメージすると思います。

ところが、ある会社の「出版サービス」のパンフレットにはこんな一文が。

出版サービスパンフレット2

 

「原稿」を自分で書かないの?

税理士が用意するのは「プロフィールの原稿」と自分の「写真」だけで、あとは用意してもらった書籍のデザインを確認するだけ。

その他は出版サービス提供会社がすべて「ご支援」いたします!

って。

…それ「ご支援」の域を超えてません?

もはや出版「代行」でしょう。

そのサービス内容は。

 

用意するのが自分のプロフィールと写真だけでいいなら、そりゃえらく簡単に書籍を出版できるんでしょうけど。

肝心の書籍の中身を自分で書かない、ってどうなんでしょうか。

自分が世間に伝えたい熱い考え・想いがあって、それを原稿に落とし込んで推敲を重ねて。

ものすごい苦労を重ねて初めて「自分名義の書籍」って出版できるもんだと考えていた自分が、初めてこの「出版サービス」のパンフレットを見たときはなかなかの衝撃でした。

というか、違和感ありまくりでした。

 

自分で原稿を書いてないのに「自分の書籍」として渡すの?

結局のところ、この「出版サービス」を利用して出版する書籍にかかる費用は広告宣伝費としての意味合いが強いのでしょう。

「私には書籍を出版できるほどの知識・経験があります!」

「書籍を出版できるほどの強みがある税理士事務所です!」

書籍を出版したという実績で税理士自身の価値を高められる、という効果をねらって。

 

もちろん、そのような効果をねらって自分名義の書籍をお客さんに配布したり、セミナー参加者に販売したりするのは経営戦略としてありなんでしょう。

ただ、どこの誰が書いたのかもわからない原稿に自分の写真とプロフィールを載せただけの書籍を自分が書いた書籍としてアピールするのはどうなんでしょうか。

「自分が書いた書籍」はあからさまに事実と異なるので、「自分が出版した書籍」といった表現にするのかもしれませんが。

いずれにしろ、私だったら自分が原稿に何一つ関わっていない書籍を自分名義の書籍としてアピールするなんてできません。

仮に、その書籍に載っている内容をすべて自分が理解していたとしても。

 

少なくとも私は、赤の他人が書いた原稿に自分の名前だけ入れたものを自分名義の書籍として出版するくらいなら

「書籍は一度も出版したことがありません。ブログは毎週書いてます。」

と、等身大の自分をアピールする方がまだいいやと思うのでした。