「命令」はしない、「お願い」をする

「お願い」メールタイトル

 

決算書を完成させるためには、お客さんの手もとにある資料が絶対的に必要になります。

決算日時点の売掛金や買掛金、棚卸資産などの状況は、税理士が請求書などの書類からある程度推測することはできます。

あくまでできることは推測までです。

最終的な残高を確定させるには、現場をわかっている社長や経理担当者の協力が欠かせません。

そのため、追加資料の準備や疑問点への回答をお願いすることは必須なわけですが。

このときに必ず「お願い」するようにし、「命令」しないよう心掛けています。

 

「~しちゃダメだよ!」という強い態度の先輩が苦手だった

税理士は「先生」と呼ばれることが多々あります。

そして長く税理士事務所に勤めている職員も「先生」と呼ばれることが多々あり、中にはその状況に慣れてしまう人もいます。

勤務時代にある先輩と決算の打合せに同席させてもらいました。

そのときに先輩が

「社長~、こんな状況を続けてちゃダメだよ!」

と、タメ口で社長にダメだしを始めました。

当時小売業から経験してきた自分からすると、お金をもらう側の人間がお金を払う立場の人に強くモノを言う光景に強い違和感を覚えました。

もちろん長い間顧問契約を継続する中で信頼関係を構築し、その結果タメ口がきけるような関係ができていたのかもしれませんが、自分はどうにも先輩の「上から目線」にしか見えない強い態度が苦手でした。

自分だったら何かアドバイスをするにしても、「上から目線」ではなく社長と同じ高さの目線からアドバイスしたい、そう思ったのを覚えています。

 

「~してください」は圧迫感がある

現在では資料をお願いするのも質問に回答してもらうのも、メールを使うことが多いです。

メールを送るときに気をつけているのが「~してください」という「命令」口調を使わないこと。

・○○を××にしてください

例えば何か会計データの入力間違いに気づいてそれを指摘するときは、文末を「してください」にするとシンプルでわかりやすいんですが、文章にすると圧迫感を感じます。

圧迫感の理由は、つまるところ「~してください」は「命令」だからでしょう。

「~してください」は丁寧語なので表面的には丁寧に聞こえますが、端的に言ってしまうと「~しろ」ですから。

 

「お願い」フレーズを複数使いこなす

先ほどのフレーズなら

・〇〇を××にしてください

    ↓

・〇〇は××にしていただくようお願いいたします

「お願いいたします」を使うことで「命令」ではなく「お願い」になります。

「してください」よりずっとやわらかい印象にならないでしょうか。

指摘事項が複数あるときなんかはくどくなってしまうので、言い回しを複数用意しています。

・~願えますでしょうか。

・~いただきたく存じます。

・~いただけますと幸いです。

など。

言い回しを複数使いまわしても、お客さんにはくどく思われてるかもしれませんが^^

 

「お願い」ではなく「質問」もあり

また、こう訂正するべきだと気づいた項目があっても、100%の確証がなければ「お願い」ではなく「質問」の形にするようにしています。

・〇〇は××ではないでしょうか。

という書き方です。

自分の方が常に正しいわけではなく、お客さんの処理方法が正しいケースだって十分ありえます。

お客さんの商売の状況を100%わかっているのは社長や経理担当者であって、自分は預かる帳簿書類から商売の状況を推測しているだけなんですから。

そういった立場の違いは忘れちゃいけないと常に意識しています。

 

税理士は指導する立場なんだから上から目線で何が悪い!

って意見もあると思います。

そのような立ち振る舞いをする税理士を否定するわけではまったくありません。

「経営課題をズバッと指導してくれる頼りになる税理士」

として需要があるでしょう。

ただ、私にはその立ち振る舞いができないというだけで。

私は経営者の方より上の立場に立つ、というのが性格上合わない、というかムリなんです。

「指導」するんじゃなく、同じ高さの目線から強い言葉を使わずに「アドバイス」をしたい。

こういったスタンスの税理士もまた経営者から一定の需要があるはず。

あとは経営者がどういったスタンスの税理士を希望するか。

ただそれだけの話です。