長野県内の3月決算上場企業の売上高や経常利益をピボットテーブルで並び替えてみた

2022年3月上場企業決算

 

上場企業の多くは3月決算。

3月決算企業の決算数値は毎年5月中に固まります。

例年5月の下旬には地元の新聞の信濃毎日新聞に売上高や利益が一覧で載ります。

 

掲載順は数値の大きい順で載るわけではありません。

なので

「売上高の大きい会社はどこ?」

「利益の大きい会社は?」

「利益率の高い会社は?」

こういった目線で見ようとしても、紙面だけではなかなかわかりません。

また、地域を限定した経営資料はふだんあまり見ることができません。

「長野県内の上場企業の決算数値をデータとしてまとめておけばお客さんの役に立つことがあるのでは?」

そう考え、Excelのピボットテーブル機能を使って売上高や利益、利益率をデータにして並び替えてみました。

 

売上高、経常利益、経常利益率を大きい順に並べ替えてみた

ピボットテーブルの使い方は、この記事にまとめています。

Excelでデータを集計するならSUM関数よりピボットテーブルが圧倒的に便利!

 

会社名と売上高、経常利益は新聞を見ながらExcelへ手入力、経常利益率は数式を入れて求めました。

業種の大分類は新聞に載っているとおりに手入力し、小分類は証券取引所が公表している業種区分をダウンロードし、VLOOKUP関数で拾い出しています。

(その後、IRBANKというホームページにCSVファイルで売上高や経常利益がデータとして公表されているのを発見。

このデータがあれば新聞の数値を手入力しなくても、VLOOKUP関数で簡単に数値を引っ張ってこれました。

手入力しようとする前にもっと効率的な方法を見つけようとするべきでした…)

一年前にも同じようにデータを登録したので、当期(2022年3月期)と前期(2021年3月期)の2期分の数値を入れてあります。

売上高と経常利益の単位は「百万円」です。

上場企業決算値データ

 

このデータを基にピボットテーブルで集計をします。

いずれも、当期(2022年3月期)の数値が大きい順に並べ替えました。

なお、前田製作所は当期の途中で親会社などと経営統合により上場廃止したため、当期の数値は載っていません。

またエフビー介護サービスは当期より上場したため、前期の数値は載っていません。

まずは売上高。

売上高

 

売上高1兆円以上は2社。

1兆円は上場企業の中でもさらに狭き門なのがわかります。

1千億円以上の会社でも6社しかありませんし。

ボリュームゾーンは百億円~1千億円(30社中20社、約3分の2)ですね。

会計基準の変更などの理由で前期比を発表していない5社を除くと増収は19社とのこと。

前期より経営が順調だった会社の方が多かったことがうかがえます。

 

次は経常利益。

経常利益

 

上位3社の顔ぶれは全く同じ。

売上高が大きいほど経常利益も大きくなるのは当然なように思えますが、業種によっては一概にそうとも言いきれません。

例えば売上高では4番目に大きいマルイチ産商は経常利益では14番目です。

マルイチ産商が稼げていないというわけではなく、卸売業という業種自体利益率が他業種より低いのでこれは仕方のないことなのかと。

逆に売上高では25番目のシーティーエスは経常利益では13番目。

「サービス業」となっていますが、ホームページを見ると建設業向けのクラウドサービスや測量計測システムの提供が主力事業のようなのでIT企業に近いような気が。

IT企業は卸売業のように仕入がないので利益率は他業種より高い傾向にあります。

「稼ぐ力」という観点から売上高も重要ですが、それ以上に経常利益に注目したいですね。

 

最後は経常利益率。

経常利益率

 

今回集計した中で、個人的にはこの経常利益率が一番大事だと考えています。

経常利益÷売上高で求められる経常利益率。

%で表すこの指標であれば、企業の規模に関係なく比較ができます。

稼ぐ体質を構築できれば、中小企業でも上場企業を上回る経常利益率を叩き出せる可能性は十二分にあります。

 

無論、経常利益率の向上が経営者にとっての至上命題なわけではありません。

極端な話をすれば、従業員の給料を一律カットしてこれまでと同じ仕事をさせることができれば経費が減るので経常利益率は上がります。

けれど、そんな姿勢で経営を続ければ一時数値が改善しても経営が長続きしないことはだれの目にも明らかです。

あくまでまっとうな経費削減、仕入原価の低減、売上の拡大などを通じて経営状況を改善したうえで経常利益率は改善されるべきです。

 

中小企業の社長の中には自身が経営改善に取り組む中で目標となる指標がほしい方もいるでしょう。

そんな方には規模は違えど地元で自社と同じような業種の仕事をしている上場企業の経常利益率は参考になるはずです。

 

ちなみに、1番目の新光電気工業の経常利益率は27.9%。

製造業の中だけでなくサービス業など利益率の高い他業種も含めて1番、というのはすごすぎます。

市場の半導体需要が旺盛なことが寄与しているようですね。

2番目の八十二銀行の経常利益率は25.1%。

金融業もIT企業と同じく仕入がないので、利益率が高いのは納得。

ただ、同業の長野銀行の利益率が9.7%であるのと比較すると八十二銀行の利益率の高さが際立ちます。

その他はざっくり製造業は5~10%、建設業は5~8%、小売業は3%、卸売業は1~3%、がボリュームゾーンといった感じでしょうか。

 

地元上場企業の「相場」を知ることができた

今回のデータ作成を通じて地元上場企業の数値の「相場」をざっくりと知ることができました。

ピボットテーブルを使って自分が見たい形式に数値を並び替えることで

「地元上場企業はどのくらい、売上や利益をあげているのか」

「業種によって経常利益率はどの位差があるのか」

といった地元上場企業の決算数値の「相場」を体感することができ、いい経験になりました。

 

経営指標はとかく「全国」とか「関東甲信越」とか対象範囲が広くなりがち。

お客さんに経営指標を見せても

「全国の状況と地方の状況をいっしょにされても、あまり参考には、ね…」

と真剣に見てもらえないことはこれまでよくありました。

規模の差はあれど、同じ地元の上場企業の指標なら少しは興味をもって見てもらえるかも。

今回作成したデータに、少しでもお客さんから興味をもってもらえたらうれしいですね。