請求書の日付は請求日ではなく請求締日を書くべき! 理由は発生主義で経理できなくなってしまうから

 

売上や経費をいつ計上するか。

シンプルなようで実はなかなか奥が深い論点だったりします。

会計の世界では「現金主義」や「発生主義」という考え方があります。

 

引き受けた仕事が完了したら先方へ請求書を発行しますよね。

請求書の日付は請求締日を記載していますか?それとも請求した日を記載していますか?

両方載っていればまったく問題ありませんが、請求書の書式上ひとつしか日付を載せられないのであれば「請求締日」を記載しましょう。

会計上は「発生主義」で計上する必要があり、その「発生主義」で計上するためには「請求締日」がわかることが必須だからです。

 

「現金主義」はお金をもらったとき・支払ったときに計上

まずは「現金主義」の説明から。

この現金という言葉には当座預金や普通預金なども含まれます。

現金主義はその名のとおりお金をもらったときや払ったときに売上や経費を計上します。

 

例えば

3月中に完了させた仕事の売上が100万円。代金をもらったのは5月末。

この仕事にかかった経費が60万円。経費を払ったのは4月末。

単純化するために3~5月の間はこの仕事以外いっさい売上も経費も発生しない状況だとします(ちょっと無理がありますが…)。

現金主義だと4月末に60万円を経費に、5月末に100万円を売上に計上します。

3月から5月を通してみれば売上100万円から経費60万円を引いてこの仕事の利益は40万円!

となるので特に問題ありません。

問題となるのは月々の利益を把握しようとする場合。

3月の利益は入金も支払もないから0円。

4月の利益は入金がなく経費60万円の支払だけなので売上0円-経費60万円=利益△60万円。

5月の利益は売上100万円の入金だけで支払がないから売上100万円-経費0円=利益100万円。

 

パット見てなんかおかしくない?って思いますよね。

4月の試算表を作ったら利益△60万円。

5月の試算表を作ったら利益100万円。

月によってそんなに利益が乱高下するわけないでしょって。

 

上の例は思いっきり単純化しているのでおかしいとすぐにわかりますが、実際の仕事は複数の案件が同時並行で進むもの。

入金のタイミングで売上、支払のタイミングで経費を計上していてもどちらも0円という月はほぼありえないので利益は計算できてしまいます。

ただその利益は正しい数値とはいいがたいものなんです。

 

発生主義は仕事の完了月に売上も経費も計上する

一方の「発生主義」。

先ほどの例とまったく同じ条件でみてみます。

3月中に完了させた仕事の売上が100万円。売上代金をもらったのは5月末。

この仕事にかかった経費が60万円。経費を払ったのは4月末。

という場合。

3月の利益は売上100万円-経費60万円=利益40万円

4,5月の利益は0円。

3月の試算表に表示される利益は40万円。

この数字こそ正しい各月の利益の金額なんです。

 

実務では決算で「現金主義」を「発生主義」に修正している

現金主義は小規模な会社の記帳で広く使われており税理士が関与していても例外ではありません(税理士事務所によっても違うと思いますが)。

では現金主義の正しくない利益のまま決算、そして確定申告をしているのかというともちろんそんなことはなく。

実務では決算日を基準に現金主義の利益から発生主義の正しい利益になるよう修正を加えます。

「期中現金主義、期末発生主義」なんて言ったりします。

普段の記帳は現金主義で、年1回の決算で正しい発生主義の数値に修正しているんですね。

あとはお客さんとの契約形態によって半年に一度とか3ヶ月に一度のタイミングで正確な利益を把握するために決算のときとほぼ同じ修正作業を行ったりしています。

 

理想は当然毎月発生主義で入力すること。

記帳の手間との兼ね合いがあるのでなかなか難しいかもしれませんが…

今は請求書作成ソフトから会計データを連動できたりするのでそういったソフトを導入するのもありですね!

 

請求書の日付は「請求締日」

冒頭で請求書の日付のことについて「請求締日」にすべきと書きました。

先ほどの例だと請求締日が月末の会社の場合、3月中完成の仕事なら

請求締日の2020年3月31日が記載すべき日付。

これを請求書を渡した、または郵送した日付で例えば2020年4月10日と記載してあった場合。

あとで発生主義に基づいた経理をしようとしてもこの請求書の分の売上は3月分なのか、それとも4月1日~10日の分なのかわからなくなってしまいます(請求書内の項目ごとに完了日や納品日が記載されていれば問題ありませんが)。

請求書の相手方が発生主義で経理している場合、相手方も3月分の経費なのか4月分の経費なのかわからなくて困ってしまうかもしれません。

正直なところ「請求日」というのは経理上なんら必要な情報ではありません。

請求書の日付入力欄が1つしかない場合はぜひ「請求締日」を書くようにしましょう。

あとから請求書をチェックする税理士にとってもその方がとてもありがたかったりします(^^♪