「所得控除」と「税額控除」の違い。「生命保険料控除12万円」は12万円税金が戻ってくる訳じゃない!
所得税の確定申告書のなかに書いてある「控除」という用語。
税法の中ではかなりの頻度で登場する用語の一つです。
所得税法の中でもたくさん登場するのですが、大きなくくりで言えば
・所得控除
・税額控除
の2つに分かれます。
どちらも税金が少なくなるというものですが、その内容は大きく異なります。
代表的な「生命保険料控除」と「住宅ローン控除」
「所得控除」も「税額控除」もたくさん種類があるので代表的なものを例にとって説明します。
「所得控除」の中でメジャーなのが「生命保険料控除」。
生命保険や個人年金、医療保険などに加入していれば最大12万円適用が受けられます。
今回は12万円控除を受けられるものと仮定します。
「税額控除」でメジャーなのは「住宅ローン控除」(正式名は「住宅借入金等特別控除」)。
「住宅ローン控除」は銀行からお金を借りて住宅を建てたり、リフォームをしたりした後に一定期間適用を受けられます。
住み始めた年によって金額が異なりますが、今回は比較しやすいように生命保険料控除と同額の12万円控除を受けられるものと仮定します。
3つのケースを比較してみる
独身のサラリーマンAさんの収入は給与のみ。
給与の額面は480万円、給与所得は330万円。
社会保険料の自己負担額は72万円(給与額面の15%)とします。
復興特別所得税は考慮しません。
①Aさんが生命保険に加入しておらず、住宅ローンもない場合
所得税は122,500円となります。
計算式
(給与所得330万円ー社会保険料控除72万円ー基礎控除38万円)×10%-9.75万円=12.25万円
②Aさんが生命保険料控除12万円の適用を受ける場合(住宅ローン控除はなし)
所得税は110,500円となります。
計算式
(給与所得330万円ー社会保険料控除72万円ー生命保険料控除12万円ー基礎控除38万円)×10%-9.75万円=11.05万円
③Aさんが住宅ローン控除12万円の適用を受ける場合(生命保険料控除はなし)
所得税は2,500円となります。
計算式
(給与所得330万円ー社会保険料控除72万円ー基礎控除38万円)×10%-9.75万円=12.25万円
12.25万円ー12万円=0.25万円
所得税額を比較すると
①「生命保険料控除」も「住宅ローン控除」もなし 122,500円
②「生命保険料控除」のみ適用あり 110,500円(①との差額▲12,000円)
③「住宅ローン控除」のみ適用あり 2,500円(①との差額▲120,000円)
「生命保険料控除」(所得控除)よりも「住宅ローン控除」(税額控除)を適用した方が同じ「12万円」控除を受けても所得税額が圧倒的に少なくなっていることが分かると思います。
税額控除の方が納税額に与えるインパクト大!
「生命保険料控除」(所得控除)と「住宅ローン控除」(税額控除)でなぜここまで所得税額が異なるのか。
それはどのタイミングで「控除」をするかが異なるからです。
「所得控除」は税率を掛ける前の「所得」から差し引きます。
結果として12万円に税率10%を掛けた12,000円しか所得税は少なくなりません。
一方の「税額控除」は税率を掛けた後の「税額」から差し引きます。
その結果12万円をダイレクトに差し引くので所得税が12万円少なくなるのです。
まとめ
「所得控除」と「税額控除」。
同じ「控除」でもその中身には大きな違いがあるということが伝わったでしょうか。
税額に大きな影響を与える「税額控除」は「所得控除」と比べると種類が少なく、世に出回っている節税策や節税商品と呼ばれるものは「所得控除」であることが多いです。
最近話題になることが多い「iDeCo(個人型確定拠出年金)」なんかも「所得控除」ですね。
節税をしようとしたときにその対象が「所得控除」なのか「税額控除」なのかで節税額はまったく異なります。
違いをしっかり理解したうえで効果的に節税の恩恵を受けたいですね!