年末調整って何を調整しているの?
毎年12月になると職場で配られる2枚の書類。
「自分や家族の名前とかを書いて、保険会社からきている証明書とかいうのをつけて、なんかよくわからん計算式にそって数字を書いて…」
「ん?こっちの紙はタイトルが来年になってるけどいいの?いつの時点の内容を書くの?」
「所得って何?生計を一、って何?」
「寡婦?特別の寡婦?寡夫?何て読むのこれ?」
「同居老親って…おばあちゃん今施設入ってるんだけど、同居っていうの?」
「そもそも、なんで会社に家族のことや収入まで教えなきゃいけないの?
プライバシーの侵害じゃん!」
多くのサラリーマンが「めんどくせー」と思いつつ、会社に指示されたから仕方なく書いて提出する書類。
その書類を基に行われる業務。
それが「年末調整」です。
ワタクシと年末調整
この年末調整のときに記入する書類、初めて提出したのは大学生のときにしていたアルバイト先でした。
なんか細かい字がたくさん書いてあって訳わかんないけど社員さんに
「右上の氏名・住所・生年月日だけ書いてくれればいいから!」
と言われ、毎年意味もわからず言われたところだけ書いて提出していました。
社会人になってからも年末調整について教えてもらう機会もなく、なんとなく氏名とか書く位。
保険料を払っていると税金が安くなるってウワサを聞いて、一度
「自動車保険料を払ってると税金は安くなりますか?」
って事務の方に聞いて
「なるわけないでしょ!」
と呆れられたことがあります…
けど、しょうがないと思うんです。
毎年やることなのに、何のために何を書くべきなのか教わる機会がそれまでなかったんですから。
そもそも何を「調整」するのか
「調整」するもの、それは「税金」(正確には「所得税」)です。
年末の給料は手取がいつもより増えるイメージをもっている方も多いのではないでしょうか。
その増えたのが「調整」分。
所得税は毎月の給料から天引きされています。
ただ、この額はあくまで概算額。
「一ヶ月でこの位の給料だったら、年収はだいたいこの位。なら税金はこの位天引しとけばOKでしょ」
位のノリなんです(軽いノリですが天引額は法律で細かく決まっています)。
12月最後の給料の額が決まるとその年の年収が確定します。
後は例の書類に書いてもらった家族や保険料の情報があれば所得税の額を確定できます。
その確定額とこれまでの概算額を比較して天引額が多すぎれば還付。
少なすぎれば追加徴収。
通常はやや多めに天引しているので、最後の給料では還付するケースが多いです。
この最後の「調整」を「年末」で行うから「年末調整」なんですね(実際には年明けに調整しているところも結構ありますが)。
書類の情報は所得税を確定させるのに必要不可欠
書類に書く家族の情報や保険料支払いの情報。
はっきり言ってしまえば、自身の氏名・生年月日・住所・マイナンバーの記載さえあれば、後は何一つ書かなくてもかまいません。
家族の情報や保険料支払いの情報を記載する義務なんてものはまったくないからです。
では、年末調整担当者はなぜ家族の就職・転職状況や同居状況、障害の有無やさらには離婚したことがあるかなんてことまで聞いてきたりするのか。
去年つけていた保険料の証明書がないと、「今年はないんですか?」といちいち聞いてくるのか。
それは…
「あなたにかかる税金をちょっとでも少なくするためなんです!!!」
…年末調整担当者の声を代弁するべくちょっとだけ強調してみました(笑)。
何も担当者さんは好きで従業員のプライバシーに関わることを根掘り葉掘り聞いているわけではないんです。
養っていたり、障害がある家族がいたり、シングルマザーだったりすると税制上の優遇があり、その人にかかる税金を少なく計算できるんです。
家族に一定以上の収入があると優遇が受けられなくなるので収入や就職・転職の状況も合わせて聞かざるをえないんです。
保険料の支払いも去年よりも金額が少ないとその分税金が多くなり還付額が減ってしまいます。
家族の状況や保険料の支払い状況がきっちり書類に書いてあれば問題ないのですが、なにぶん従業員さんからすれば1年に1回の作業なので記載が漏れてしまうことも珍しくありません。
担当者は去年の年末調整の資料と比較しながら作業を進めるので、書類に書いてある状況が去年と違っているとそれに気づきます。
例えば去年まで記載のあった子供の名前が今年は記載されていない、という場合
・子供が就職したから扶養にできないと思い書かなかったのか
・既に就職しているのか、それとも来年4月から就職なのか
・単なる記載漏れなのか
どうしても本人に聞かないと、扶養にできるかどうか担当者では勝手に判断できないんですね。
担当者がわずらわしいと思われてもいろいろ聞くのは、その人の税金の負担を少しでも減らせればと想ってのこと。
税理士として年末調整に関わる立場からも、その担当者の想いを理解してくれる方がもっと増えてほしいと思ってやみません。