老後資金を確保しつつ節税にもいざというときの資金繰り対策にもなる 小規模企業共済は将来の備えを作るためにベストな制度!
「なにか節税できるいい方法はないの?」
税理士であればものすごく聞かれるこの質問。
答えはいくつもあるわけですが私が必ず提案してきた方法のひとつが今回紹介する「小規模企業共済」です。
小規模企業共済を必ず提案してきた理由は圧倒的なお得感があるから。
ポイントは以下の3点。
1.節税になる
2.将来払った以上のお金を手にできる可能性が高い
3.貸付制度を使えばいざというときの資金繰り対策になる
小規模企業共済とは
小規模企業共済制度とは一言でいえば
「経営者が自分の退職金を自分自身で積み立てる制度」
です。
サラリーマンであれば退職金は会社が用意してくれます(退職金は法律上支払う義務があるわけではないので退職金がでない会社も世の中にはたくさんありますが…)。
しかし小規模企業の経営者や個人事業主の退職金はだれも用意してくれません。
会社であればまだ生命保険を活用したりして経営者自身の退職金を準備することが可能ですが、個人事業主の場合それも難しいです。
なにより個人事業主の場合事業をやめるときに事業用の預金口座に残ったお金をプライベートの預金口座に移したからと言ってそれが「退職金」として税務上認められるわけではありません。
個人事業主が将来自分に対して税務上の「退職金」を支払おうとすればこの小規模企業共済を使うしかないんです。
国も小規模企業の経営者や個人事業主が退職金を自分で用意するのを推奨しています。
特に個人事業主は国民年金だけでは老後資金が圧倒的に不足するのは明らかですしね。
その推奨策として用意されているのが小規模企業共済なんです。
今回の記事は小規模企業共済のメリットを紹介するのが目的なので加入条件などの制度の詳細までは載せません。
制度の詳細を知りたい方はこちらからどうぞ。
節税になる
自分で退職金を用意する・積み立てる、ということはお金が一時的に手もとからでていくことを意味します。
若いときに加入する人ほど手もとからでていったお金が将来戻ってくるまでに長い時間がかかります。
当然そこに何かしらメリットがなければだれも積み立てようとはしません。
そこで国はメリットを用意しました。
その最たるものが
「節税」
でしょう。
まず支払ったとき。
全額が所得控除の対象となります(「所得控除」の意味がピンとこない方は「経費」と読み替えてもらってもOKです)。
掛金は月1千円~7万円の範囲で自由に設定できます。
増額・減額時は書類の提出が必要なのでひと手間かかりますが、それほど大変なわけではありません。
月3万円に設定した場合1年間の支払額は36万円。
税率は人によって異なるので一概には言えませんが、最低税率は15%(所得税5%+住民税10%)なので少なくとも5万4千円(36万円×15%)節税できます。
(以下、今回の記事内では復興特別所得税を考慮していません。)
そして受け取るとき。
受け取り方によって税務上の退職金扱いになるケースとならないケースがありますが、退職金として受け取ることができれば税金がものすごく優遇されます。
現行の税制で退職金(税務上「退職所得」といいます)ほど優遇されている所得はないでしょう。
原則として退職金にも税金はかかります。
ただ支給額から「退職所得控除」を引いたあとの2分の1しか課税の対象にならないため、課税されたとしても負担する税金は少なくすむ可能性が高いんです。
退職所得控除は事業を続ける期間が1年伸びるたびに40万円ずつ加算されます。
20年を超えるとさらに優遇され1年あたり70万円加算されます。
事業を30年間続けた場合、退職所得控除の額は1,500万円(40万円×20年+70万円×10年)。
小規模企業共済で退職金として1,500万円を受け取ったとしても1円も税金はかからない、ということになります。
毎年掛金を払うときは税金を減らすことができ、かつ受け取るときはすごく税金がかかりづらい…
めちゃくちゃお得な制度だと思いませんか?
将来払った以上のお金を手にできる可能性が高い
節税策の多くは実行すると手もとにあるお金が減ります。
・仕事で使う車や備品など仕事道具の購入
・生命保険への加入
・決算賞与の支給
・所有する資産の修繕
・社宅を借りる
・出張日当を支払う
・役員報酬や給与の増額
など、どれもお金が減ります。
もちろんお金が減る代わりに便利な道具を使えるようになったり、社員の給与を上げてモチベーションアップにつなげたり経営上のメリットはあるのですが。
資産を売却したり生命保険を解約したりといった将来お金が戻ってくる節税策もありますが、100払ったものが将来100戻ってくることはなかなかありません。
そんな中で小規模企業共済は100払ったものが将来110や120になって戻ってくる可能性があります。
辞め方によって変わりますが、一番有利な「事業を廃止」した場合。
現在のシミュレーションだと30年間で360万円を払い込んでいた場合、受取金額は約434万円!(パンフレットにも載っている金額です)
実に2割増です。
これは払い込んだお金を預かった側で運用してくれているから。
現行の予定利率は1.0%です。
ただこの予定利率はここ20数年間で6.6%→4.0%→2.5%→1.0%とどんどん下がってきています。
なので今の利率が今後さらに低くなる可能性は十分ありえます。
利率が下がれば当然将来の受取金額は現在のシミュレーションより減ります。
それでも超低金利の預金に預けておくよりははるかにいいと思います。
一方でデメリットもあります。
任意解約(事業をやめたりする前に解約してしまう)は損をする可能性が高いです。
制度に加入してから20年以内だと払い込んだお金より少ない金額しか戻ってきません。
受け取るお金も「一時所得」という扱いになるので税金の計算上「退職所得」よりも不利になります。
このデメリットを避けるために、経営状況が悪化してお金の払込が厳しくなったときには掛金の減額で乗り切るという方法を覚えておきましょう。
掛金は月1千円まで落とせます。
月1千円なら年間でも1万2千円。
これなら経営状況が厳しくてもなんとか捻出できるのではないでしょうか。
どうしてもお金が必要であればこの後に紹介する貸付制度を使うという手もありますので任意解約は本当に最後の手段にすべきです。
貸付制度を使えばいざというときの資金繰り対策になる
この貸付制度はすでに支払済の掛金の7~9割の金額を一時的に借りることができる制度です。
以前はこの貸付制度をお客さんに案内するとしてもさらっと説明する程度でした。
担保や保証人は不要ですが利息は年0.9%~1.5%かかるため、「自分が積み立てたお金に利息がかかるのか~」と私自身利用に後ろ向きだったからです。
しかしコロナ禍の今、とても重要で使える制度だったんだと考えを改めました。
まず最大の利点が「即日融資」。
商工組合中央金庫(商工中金)での申し込みであれば14:00までに窓口で手続きが完了すれば即日融資が受けられます。
その他の金融機関の場合は申し込み後2~3日かかってしまいます。それでも通常の融資よりは早いですが。
通常の融資だと数週間から1ヶ月かかるのが普通ですから。
ましてやコロナ禍の今は金融機関の融資体制が申込数に追いつかず、さらに時間がかかっていると聞きます。
「支払日までに金融機関からの融資が間に合わない!」というときに金融機関からの融資が実行されるまでの「つなぎ資金」としてすごく有効だと思います。
さらに新型コロナウイルスの影響を受けて業績が悪化(月売上が前年または前々年同月比較して5%以上減少)している場合は「特定緊急経営安定貸付」制度を使うことができ、この制度を利用すれば利息がかからず、さらに1年間は返済据え置きで借りることができます。
最寄りの商工中金の所在地はこちら。
長野県内は長野市、松本市、諏訪市の3か所ですね。
まとめ
小規模企業共済のお得な点は以下の3つ。
1.節税になる
2.将来払った以上のお金を手にできる可能性が高い
3.貸付制度を使えばいざというときの資金繰り対策になる
現役バリバリでお金を稼げているときはなかなか将来へのお金の積立は意識できないものです。
しかしバリバリお金を稼げる時期が常に続くとは限りません。
いいときしか悪いときへの備えはできません。
小規模企業共済は将来訪れるかもしれない悪いときへの備えを作るための方法としてベストだと私は思っています。