医療費控除の集計は「医療費通知」(医療費のお知らせ)をとっておけば楽になる
医療費控除とは何か。
ざっくり言えば1年間でかかった医療費が一定額以上あると税金が戻ってくる、そんな制度です。
ふだん確定申告になじみのないサラリーマンの方でも知っている方は多いと思います。
この制度、実は2017年以降大きく変わった部分があります。
2016年以前は原則必要だった領収書の提出・提示が不要になったのです。
その代わりに「医療費控除の明細書」を作成して提出し、領収書は自宅で5年間保存することが必要になりました。
2019年分の確定申告までは経過措置として医療費控除の明細書を作成せず領収書の提出・提示でもOKとされていますが2020年分からは医療費控除の明細書を作成する必要がでてきます。
この医療費控除の明細書を作るときに保険組合から年に数回送られてくる医療費通知(「医療費のお知らせ」など名称はさまざま。いつだれがどの医療機関でいくら医療費を負担したかが表示されているやつ)が便利なのでぜひ保管しておきましょう!
というのがこの記事のテーマです。
税理士事務所泣かせの医療費集計
これまで医療費の領収書を集計する、という業務は実に税理士事務所の職員泣かせでした。
所得税の確定申告作業が集中する2~3月。
1年で最も業務が多くなるこの時期。
どんどん近づいてくる申告期限という名のタイムリミット。
そんな中お客さんから送られてくる大量の医療費の領収書…
領収書の金額を電卓で集計すればそれでOKなわけでもなく
医療機関ごとに領収書を分ける作業から始まり
・今回の申告年以外の領収書が混ざっていないか
・適用対象外(人間ドッグ、予防接種など)の領収書がないか
・電卓の打ち間違いがないか
と、いろんなことに気をつかいながら集計しないといけないのでかなり大変なんです。
申告期限間近に泣きそうになりながらこの集計作業を私もしていました。
税理士事務所職員あるあるですね…泣
領収書の間にはさまっている医療費通知を見るたびに
「こんなに丁寧に医療費通知で集計された値がわかるのになんでこの値を使っちゃいけないんだ!」
と怒りにも似た感情を覚えたのも決して私だけではないと思います。
(2016年以前は今とは逆に医療費通知を医療費控除の計算に使えませんでした。)
医療費通知で1~10月分まではカンタン集計!
2017年以降作る必要がある「医療費控除の明細書」では医療費通知に書かれている内容については医療費通知を添付すればその集計額を転記するだけで済みます。
どの保険組合も1~10月までの医療費通知は確定申告に間に合うよう届くはずです(これまでに確認した医療費通知を見る限り。保険組合によって違うところもあるかもしれません)。
だいたい年2回、1~5月分と6~10月分って感じで送ってくる組合が多いようです。
合計額も書かれているので非常に簡単に集計することができます。
自分が所属している税理士国保は合計額が書いていないのですが…!
税理士国保さん、そこは合計額を書いてくれていないとありがたみも半減ですよ…
せめてネットからCSV形式でダウンロードできるようにでもしてくれればこちらでサクッと集計できるんですけどねぇ。
11~12月分と保険適用外の治療分は領収書で対応
なんだかなぁ、と思うのは11~12月分の医療費通知が現行の仕組みでは確定申告期限に間に合わないこと。
1~12月の医療費が医療費通知にすべてまとまっていてその通知さえあれば医療費の集計をまったくする必要がない、というのが理想なはず。
現行の仕組みではお医者さんから保険組合に情報がいって保険組合で医療費通知を作成するのにどうしても時間がかかり間に合わない、というのは容易に想像できますが。
せっかく使いやすく変わった制度です。
11~12月分まで含めた医療費通知、なんとか翌年の3月はじめ位までに発送できるようになってほしいものです。
他に注意すべき点があります。
医療費通知は保険組合を通して発行されるので保険適用外の医療費については当然載っていません。
保険適用外でもそれが具合の悪いところを直すための費用であれば医療費控除の対象にはなる可能性があります。
歯医者さんでのインプラント治療とか目医者さんでのレーシック治療とか。
保険が効かないので医療費も当然高額です。
保険適用外の医療費分の領収書は1年分しっかりとっておいてもれなく医療費控除の対象にしましょう。
合わせて11~12月分の領収書も保険適用外医療の領収書も保管しておくのを忘れずに。
これまで税理士の方からお客さんにさんざん
「医療費通知は医療費控除の計算に使えないので捨ててしまってかまいません。」
とお伝えしてきたので届いてもすぐ捨ててしまっている方が結構いらっしゃいます。
これからは逆に
「医療費通知は捨てないでくださいね!」
とお伝えしなきゃいけません。
この記事を読んでいただいて「医療費通知があると今後は便利なんだな」、ということがわかっていただければ嬉しいです。