個人の貸借対照表がアテにならない理由

貸借対照表

 

貸借対照表は、ある時点の個人や法人が所有している資産・負債、資産と負債の差額の純資産を表したものです。

決算書には大きく分けて損益計算書と貸借対照表の2種類があります。

会社の売上や利益を表示した損益計算書の方が貸借対照表よりシンプルでわかりやすく、社長や株主にとっても馴染みやすいでしょう。

しかし、重要なのは貸借対照表の方です。

損益計算書はある一定期間(通常は1年間)の売上・利益しか表せません。

一方の貸借対照表は「ある時点」の資産・負債、そして資産と負債の差額である純資産を表します。

貸借対照表には事業がスタートしてから「ある時点」までの間に発生したすべての取引、その結果発生した毎年の利益を反映させることができます。

創立100年の会社の貸借対照表なら100期の貸借対照表には100年間の取引・100年間の間に毎年発生した利益のすべてが反映されていることになります。

一方100期の損益計算書には1~99期の業績・取引は何ら反映されません。

このことからも個人・法人の財政状態の現状を適切に把握するなら貸借対照表が重要であることがわかります。

 

法人の貸借対照表にはすべてが載る

法人の貸借対照表には原則すべての資産・負債が載ります。

資産には現預金や換金できるものが、負債には支払うべきものが。

法人名義の資産や負債を貸借対照表に載せない、という選択肢はありません。

ただ、換金性のある保険に加入している場合に解約返戻金の一部が資産に載っていなかったりするなど一部例額はあったりします。

あと、不動産や車両、機械や備品などの固定資産は時価ではなく取得価額から過去の減価償却費を差し引いた簿価を載せるので、貸借対照表作成時点の時価を表しているわけではないことには注意する必要があります。

 

個人の貸借対照表にすべては載らない

個人、ここでは個人事業主のことを指しますが青色申告特別控除55万円または65万円の適用を受けるには税務署への提出書類として貸借対照表の作成が必須。

個人が作成する貸借対照表もには生活費を処理するための独自科目があったりはしますが、法人が作る貸借対照表とルールは同じです。

ただ、大きな違いがあります。

それは

「個人の作成する貸借対照表に載せる資産・負債は自身の事業に関係するもののみでOK」

という点。

事業に関係するもののみ載せればOK=プライベートなものは載せる必要がない

ということ。

個人の貸借対照表がアテにならないのは対象者の資産・負債のすべてが載っていないからなんです。

もちろん、事業用の資産・負債にプライベートの資産・負債まですべて加えた貸借対照表を作成しても全然OKなんですが、税務署へ提出する貸借対照表にプライベートの資産・負債まで載せている人はかなりの少数者だと思います。

私もプライベートの分は一切載せていません。

 

個人の貸借対照表がアテにならない具体例をあげれば

貸借対照表にはほんのわずかな預金残高しか載っていない。

けど、実はプライベートで億を超える預金を持っているとか。

逆に貸借対照表に潤沢な預金残高が載っているけど、プライベートの方では住宅ローンの残高に対して自宅の価値が大幅に目減りしていて実質債務超過になっているとか。

要は事業用だけでなくプライベートな資産・負債も合算した貸借対照表でなければ、その対象者個人の真実の財政状態はわからない、ということです。

 

自分のためにすべてを載せた貸借対照表を作るのはおすすめ

個人事業主が自分のために、事業分・プライベート分関係なくすべての資産・負債を網羅した貸借対照表を作成するのはおすすめです。

これはあくまで自分自身の財政状態を客観的に把握するためのものです。

税務署へ提出する書類ではないので、1円単位まできっちりやろうとしなくたってかまいません。

ただ税務署へ提出する貸借対照表では金額を簿価で揃えますが、自分自身のために作る貸借対照表は時価ベースの方がいいでしょう。

時価ベースで資産・負債を漏れなく集計して初めて正味の純資産を計算することができます。

 

正味の純資産を把握することができれば

「この純資産をもっと増やしていきたい!」

「数年後に純資産を〇百万円にする!」

といった家計改善の具体的な指標にもなり、モチベーションアップにもつながっていくはずです。