借金には「よくない借金」と「よい借金」があるという話

子どものころ、親からよく言われた教えがありました。

「借金だけはしちゃいけない。」

借金で身を崩した人の話は昔からあったのでしょう、「よくわかんないけど、借金はとにかく”よくないこと”、”怖いこと”」と、幼い自分にはインプットされました。

そのおかげもあり、これまでの人生で身を崩すような借金はせずに生きてくることができており、親にはとても感謝しています。

 

そんな私は今、税理士・FP(ファイナンシャルプランナー)というお金に関わることが多い仕事を生業としています。

税理士・FPの資格を取るまでに得た知識や実務経験から、借金にも両親が言っていたような「しちゃいけない」系の「よくない借金」と、「してもよい」系の「よい借金」の2通りがあることがわかってきました。

今回は自分なりに「よくない借金」と「よい借金」についてまとめてみようと思います。

 

「よくない借金」は消費・浪費目的、高利率

「よくない借金」は世間的にイメージされやすいタイプの消費・浪費目的の借金。

例えば、生活費の補填。

一時的に生活費が不足してしまったので、急場をしのぐために借金をした…

なんてケースですね。

収入の減少が一時的なものであれば、急場を凌ぐためにやむを得ない場合もあるとは思いますが。

 

そして、非常に「よくない」のは浪費目的。

ギャンブルや趣味などの遊興費、ブランド品など高額品の購入目的でしてしまう借入。

ギャンブルで大勝できたときはいざ知らず、返済のあてもなく浪費目的で借りたお金を使ってしまえば行きつく先は…

 

消費・浪費目的の「よくない借金」に共通しているのは、「お金を生み出さない」ということ。

後述する「よい借金」との大きな違いはお金を生み出す可能性があるか・否かという部分です。

 

さらに、こういった消費・浪費目的の借金は「使い道自由」のいわゆる「フリーローン」であることが多く利率も高めです。

消費・浪費目的の借金をせざるをえない状況ということは、当然貯蓄はほとんどないはず。

なのに借金の元本+高金利を毎月返済しないといけなくなれば、ただでさえ貯まらないお金がますます貯まらづらくなっていくのは自明の理といえるでしょう。

 

こんなことを書いている私ですが、学生時代まさに浪費目的の借金をしようとしたことがあります。

借金の目的は中型バイクの購入。

大学に入って、普通自動二輪免許(いわゆる排気量400ccのバイクまで乗れる「中型免許」)の取得費用をアルバイトで稼いだところまではよかったのですが。

免許が取れると、当然バイクが欲しくなります。

一日中、中古車情報誌を眺めたり、レッド〇ロンに足しげく通ったり。

その結果、自分にとって理想の1台を見つけてしまうまでにあまり時間はかかりませんでした。

中古車といえど400ccで40万円くらいはしたでしょうか。

免許代を支払って貯金がなくなってしまった自分にとって、今すぐこのバイクを手に入れる手段はローンを組む以外ない。

バイク屋さんでシミュレーションしてもらった月々の返済額を見て

「これなら、毎月のアルバイト代から無理なく返済できるじゃん!」

と、ローンを組む気満々に。

しかしこの時点で、自分がローンを組もうとしていることが親に伝わります。

当然親は大反対。

あえなくローンでのバイク購入計画は中止することになりました。

 

あの当時はバイクに乗れないことがめちゃめちゃ悔しかったのを覚えています。

ただ、その後1年間アルバイトを続けて貯めたお金でバイクを購入することができたのはとてもよい経験だったと思っています。

もしあの経験がなかったら、欲しいものがでてきたときに安易にローンを組むような性格になっていたかもしれません。

直前でローンを組むのを阻止してくれた親に感謝ですね^^

 

よい借金は投資目的、低金利

大学生のころの自分はお金に関する知識も乏しく、今思えば非常に危なっかしいことをしていたわけですが。

ある程度お金に関する知識を身につけた今なら借金には「よい借金」もある、ということがわかってきます。

「よい借金」、それは借りたお金を投資にまわして、払う金利以上に利益を稼ぎだせる見込のある借金のことです。

この場合の「投資」はハイリスクハイリターンの投機的なものでなく、自身のリスク許容度に見合った適正なリスクをとった投資のことをいいます。

 

例えば、年利率2%で500万円の借金をして、その500万円を年利率3%で運用できた場合

①運用益 15万円(500万円×3%=15万円)

②支払利息 10万円(500万円×2%=10万円)

③純利益 5万円(①15万円-②10万円=5万円)

借金の利息10万円を支払っても、なお5万円手もとに残ります(支払利息の計算はわかりやすくするため、思いっきり単純化しています)。

もちろん「年利率3%の運用」が適正なリスクの範囲内でできるのか、が実際には問題になってきますが。

株や債券などの伝統的な資産に投資して、年利3~5%の成果をだすのは長期投資であれば決して無理な数字ではないようです(現在自己資金で勉強を兼ねて実践中)。

高確率で支払う金利以上に運用益をだせる見込があれば、借金の金額は多ければ多いほど、稼ぎだす利益も多くなります。

借金をテコに見立てて、「レバレッジ効果」と呼んだりしますね。

 

また、金利の低さも重要です。利率の高い借金は「よい借金」と呼べません。

資産運用の世界で、年利15%の運用益をコンスタントに稼ぎだすのは至難の業です。

一方借金をするときの金利で、15%は法定利息の範囲内。

消費者金融なんかでは年利の上限が18%だったり、地方銀行のフリーローンでも15%近くだったり。

仮にこんな高金利でした借金で資産運用をしようとしても、支払う金利以上の運用益を出し続けるには、よっぽどハイリスクな運用商品に手をださなければいけなくなります。

もはやそれはギャンブルに近く、絶対に避けるべきでしょう。

 

さいごに

「よくない借金」と「よい借金」、特に「よい借金」はお金を増やす手段として自身のリスク許容度に見合った投資のための低利率な借金はありなのではないか、という観点から書いてみました。

「借金」と聞くとすぐに拒否反応を示しがちですが、「借金」には今回紹介したような性質があることを知ってもらえたら幸いです。