【建物の法定耐用年数】「鉄骨造」はなぜ「金属造」の年数を当てはめるのか考えてみた
法人・個人を問わず事業用の資産を取得した場合、取得価額を耐用年数に応じて按分し、減価償却費として毎年経費計上していくことになります。
耐用年数はその資産を使い始めてから壊れるまでの年数として一般的に使われる用語だと思いますが、税務はこの耐用年数を種類・構造・用途などにより細かく規定しており、法定耐用年数と呼んだりします。
法定耐用年数は財務省令で定められており、国税庁で耐用年数表が公表されています。
建物の耐用年数が決まる過程
事業用の建物を建築・取得した場合も法定耐用年数に応じて毎年減価償却費を計上します。
この法定耐用年数が何年になるかで毎年の減価償却費やいつまで減価償却費を計上できるかが変わってきます。
建物の場合、どんな構造なのか・用途は何なのかによって耐用年数が決まります。
例えば木造の住宅用建物だったら22年、という具合です。
実務上建物の構造は登記簿謄本(全部事項証明書)に記載されている「構造」で確認することが多いです。
先ほど例に上げた「木造」なら耐用年数表に「木造・合成樹脂造のもの」という欄がありますので、あとは住宅用であるという「細目」がわかれば耐用年数を決められます。
「鉄骨造」が耐用年数表に載っていない!?
謄本に載っている「構造」を耐用年数表に当てはめる、それ自体はまったく難しいものではありません。
しかし、お客さんがアパートを建築したことからその年の確定申告をするときにアパートの耐用年数を決めようとしてすごく戸惑った経験があります。
理由はそのアパートの構造が「鉄骨造」だったから。
「鉄骨造と、耐用年数表には… … …載ってない!?」
そう、耐用年数表にはどこにも「鉄骨造」という表現がないんです。
じゃあ、どこに当てはまるのか。
いろいろ調べた結果、鉄骨造の場合どうやら耐用年数表上は「金属造」が該当するらしいということがわかりました。
ただ、これは他の税理士の見解などを複数確認しただけで課税庁サイドが明言している資料は見つけられませんでした。
明言している資料が見つからないのは税理士的にちょっとモヤっとします。
そもそも「金属造」の「金属」の定義って何なんだろう?
「金属」という大きなくくりの中にある「鉄」
「金属」とは何か。
「鉄」とは何か。
化学の分野ですね。
化学は高校生のとき完全に挫折した分野なので苦手意識が…
そんな私でもざっくりと調べるだけならインターネットでなんとかなります。
金属の定義文がかんたんに見つかりました。
「金属とは展性、塑性に富み、電気および熱の良導体であり、金属光沢という特有の光沢を持つ~
…すいません、ギブアップです^^
文章の中の単語がさっぱりわかりません。
そもそも展性?塑性?
読めない…
とりあえず、金属元素(金属の性質を示す元素のグループ)は80種類くらいあるらしいです。
元素の意味はかろうじてわかります。
「水平リーベ、僕の船~」
で覚えたアレですよね。
金・銀・銅・アルミニウム・マグネシウム・ナトリウムなどの元素が金属元素にあたりその中に「鉄」も含まれる、そんなイメージです。
「鉄」は「金属」の一種だから「鉄骨造」は耐用年数表上の「金属造」に含まれる。
こう考えればしっくりきました。
なぜ耐用年数表では「金属造」という表現になっているのか
建物の構造として「鉄骨造」はいたってメジャーなもの。のはず。
耐用年数表で「鉄骨造」という欄を用意しておいてくれれば迷うこともないのに、なぜ「金属造」という表現にしたのか?
これは私の何の根拠もない推測ですが。
建物以外の建物附属設備や構築物、車両運搬具や工具・器具備品は「前掲のもの以外のもの」という表現で
「列挙したもののいずれにも該当しない場合はこれを使ってね」
という耐用年数が用意されています。
平たく言えば「その他のもの」ですね。
この「前掲のもの以外のもの」(その他のもの)の欄が建物には用意されていません。
用意されているのは以下の10種類のみ。
・鉄骨鉄筋コンクリート造
・鉄筋コンクリート造
・れんが造
・石造
・ブロック造
・金属造
・木造
・合成樹脂造
・木骨モルタル造
・簡易建物
「木骨モルタル造」とか生まれてこの方一度も聞いたことがないものもありますが、それはさておき。
法定耐用年数を決めていく過程で、今は柱などに鉄骨が使われている現場でも将来は何か別の金属を使うことが当たり前になったりする可能性を考慮して「金属造」という鉄骨造よりも大きなくくりを用意したのではないでしょうか?