「会計ソフトがみんなやってくれる時代に簿記を勉強する意味はあるの?」という質問への答え
※会計ソフトはとっても便利ですがまかせっきりはよくないです。
先日質問を受けました。
「会計ソフトがみんなやってくれる時代に簿記を勉強する意味はあるの?」
と。
自分は即答しました。
「あります!」
と。
会計ソフトはすごい!
ひと昔前決算書を作成するという業務は職人芸だったはずです。
個々の取引から仕訳をきる→総勘定元帳に転記→試算表に集計→決算整理仕訳をきる→決算振替→帳簿を締め切り→残高を翌期へ繰り越し→決算書を作成
これらをすべて手計算で行っていたのですから。
簿記の知識がある人しか到底手がだせません。
会計ソフトはこの複雑な流れを知らなくても、仕訳をきるだけで決算書も総勘定元帳も全自動でつくってくれます。
最初に会計ソフトを作った人は本当にすごいと思いますね。
本来簿記の知識がなければ作れない決算書や総勘定元帳の作成が仕訳さえきれれば作れるようになった、という意味では簿記を勉強する必要性は以前より薄れたのかもしれません。
まちがったインプットからはまちがったアウトプットしかでてこない
「会計ソフトがあるから簿記の知識は不要」
という考えは以前からあるものです。
会計ソフトメーカー自身が
「簿記知識不要!」
とアピールしている場合もあります。
しかし、そうは言っても簿記の知識はやっぱり必要なんです。
なぜなら簿記の知識がないとできあがった決算書が正しいかどうかわからないから。
例えば決算書で見たことがある間違いの例。
・「売掛金」や「受取手形」の残高がマイナスになっている
・「借入金」の残高が残高証明書と一致していない
・貸借対照表の借方と貸方が一致していない
・固定資産が計上されているのに減価償却がまったく行われていない
・数百万円で購入した新車が全額経費で計上されている(資産計上されていない)
・銀行から多額の借入をして日々の資金繰りに苦しんでいるのに現金残高が異様に多い(数百万円とか)
・逆に現金残高がマイナスになっている
これらは簿記の知識がある人が見ればすぐに
「ありえない!!」
と気づけます。
しかし簿記の知識がなくなんとなく日々の取引を会計ソフトに入力しているだけの人には何がおかしいのか気づけないのです。
クラウド会計などで取引をネットバンクやカードから全自動で取り込んでいる場合も最初に正しい設定ができていなくて決算書の数値がとんでもない状態になっていることも。
会計ソフトは取引データが正しくインプットされれば正しいアウトプットをしてくれます。
しかしまちがった取引データがインプットされれば当然にまちがったアウトプットしかしてくれません(エラー表示してくれる部分もありますが)。
盲目的に会計ソフトからでてきた数値を信じるのはあまりに危険です。
決算書を見て少なくともその数値がありえない数値と気づけるためにはやっぱり簿記の知識が必要です。
その知識を身につけるためにはコツコツ勉強するしかありません。
勉強する意味は絶対にあります。
会計ソフトの発達により単純なデータ入力の仕事は今後少なくなっていくでしょう。
それでも簿記・会計がどんな会社にとっても重要であることは変わりません。
決算書の作成過程でどれだけ自動化が実現できても、できあがった決算書を見るのは人です。
その決算書を正しく見ることができるようになる簿記の勉強は決してムダにはなりません。
「簿記を勉強する意味はあるの?」
と聞かれて
「あります!」
と自信をもって即答できた根拠をあらためて見つめなおしてみました。